ブルゴーニュの運河の風景は栃木と同じなんだろか?

2019.04.04 Thursday 23:08
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    2009年に始めて、ブルゴーニュの運河というものを知った。

    ゆっくりと流れるこの運河を、船を借りて夏の間バカンスで下っていく。途中の街で気が向いたら降りて観光をしながら、あとは日がな船にゆられて読書をするのだ、と家主のClaudineは言った。

    なんぢゃ、その夢のような企画。

     

    私は船は借りられないので、自転車を借りて休日に運河沿いをあてもなく走った。

    往復一時間のゆるりとしたサイクリングの間、会ったのは釣りをする一人のおじさんと、何もない運河の果てから突然現れて歩いてきて、すれ違いざま「ボンジュール、マダム」と微笑んでいった6歳ぐらいの男の子だけだった。

    おじさんはとうもろこしの缶詰の空き缶に餌をいれて釣り糸をたれていたけど、帰り道に覗いたバケツの中には、相変わらず魚は一匹も入っていなかった。

     

    話し声も、音もしない。

    あるのはただ、静寂という音だけ。

    両脇に広がる牧草の丘陵には、この土地にだけいるという白い牛たちがのんびりと草をはんでいた。

     

    私はすっかり

    ブルゴーニュのとりこになった。

     

     

     

    それから何度か同じことを繰り返し

    7年目のある日。

     

    そうだ、ここに友達を呼ぼうと思い立った私は、滞在の後半に古い友達を呼び寄せて、しばしのブルゴーニュの休暇を楽しんだ。

    彼女に一番見せたかったのは、この運河の風景で

    何よりも一緒にしたかったのは、運河のサイクリングだったから

     

    私たちは晴天の初夏のある日、自転車を借りて運河をただただ走った。

    初夏のブルゴーニュの運河を、パニエに水とサンドイッチを入れてのんびり走り、気が向いたら小さな村に寄り道をする。

    完璧だ、と私は思って、興奮気味に「ずっとこんな感じなんだよ、いいでしょう?」と彼女に呼びかけた。

     

    あー、と彼女は答えた。

     

    「うちの田舎の栃木とおんなじ感じね」

     

    え。

     

    栃木?

     

    いや、違うよ、ここ、ブルゴーニュだよ。ブルゴーニュの運河だよ。

     

    「田舎ってどこも同じ風景なんだなーと思って。咲いてる花も同じだし」

     

    草花好きの彼女はそれから、日本にも咲いているという知ってる花を見つけては写真を取り続け

    いたく満足して帰ってきたけれど

    日本とまったく違う風景を見せてあげられると思っていた私は肩透かしをくらったまま、なにかとてつもなく新鮮な体験をしたような気になったもんだった。

     

    ああ、そういえば

    それからパリに移動して、パリが初訪問という彼女に「エッフェル塔と一緒に写真撮ろうか?」と言ったら

    「いい、いい。毎日スカイツリー見てるから」と答えられ

    「セーヌ川のほとり歩かない?」と言ったら、「隅田川と変わらない」と言われて

    さらに、なんだか新鮮きわまりない気分になったのだった。

     

    眼の前に見える景色の中に、知っているものを探すのか、未知のものを探すのか。

    そして、人はやっぱり、自分に興味のあるものにしか関心は向かないのじゃなあ、と。

    もしかしたら私達はものすごく違うのかもしれないけれど

    それでも一緒に過ごした時間は、存分におもしろく楽しかった。

     

    この写真は、そんなことを思い出した一枚。

     

    ブルゴーニュの運河は何度でも行きたい。

    誰もいない運河のほとりを自転車で走っていく。

    思い出すだけで、ごはん3杯ぐらい、いける。

    category:Photo series | by:武蔵野婦人comments(0) | - | -
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