ディジョンの天使と、「『死』の受容の嘘っぽさ」

2019.03.26 Tuesday 13:26
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    暑さと疲労で朦朧となって迷い込んだDijonの美術館で

    汗だくになったシャツを脱いで展示室のソファに座っていたら、いつの間にかうとうと眠りに落ちていた。

     

    探し当ててたどり着いたわけでもなく、入場料無料という看板を見て、ただふらりと入った。

    そんな場所で、ぼんやりと眠り方覚めた私の前にいたのは

    こんな天使たちだった。なんかもうね、腰が抜けたね。

     

    美しすぎて

    そして

    静かで。

     

     

    昨年、思いがけずみつかった病で入院していた病院のベッドで

    絶え間なく聞こえてくるナースコールの音や、咳やうめき声みたいなものをかき消そうと

    私はネットでみつけたビザンツ聖歌を、ヘッドフォンで聞いていたんだった。

    病と死の同居した空間で、眠りが密やかに押し寄せて

    ぼんやりと意識が遠のきはじめたとき

     

    聖歌の歌声にのせて

    眼の前に、このディジョンで出会ったような天使が、一斉に集まってくるという不思議な幻視が起きて

     

    ああ、こんなふうに

    金色の光と、ひたすら天に登っていく天使たちに連れられるように死を迎えられるのなら

    それも、悪くはないな、と思った。

     

    そんなことを考えて、結局さくりと退院して

    まだまだ天使は当分迎えに来ないという生活に戻ることができた。

    よかった。

     

    あの時の天使

    ディジョンから来たのかな。

    とにかく、このディジョン美術館でブルゴーニュ大公の巨大な墓ともいえる彫像を守っている天使たちは

    超絶に美しいので、行くことあったらぜひ見てみて。

     

     

    さて、そんな風に日常に戻った私の一方で

    天使に連れられて逝ってしまった同級生がいる。

     

    彼女のは死の間際まで本を書き続けて

    その本が先日出版され、私の手元には彼女の死から3ヶ月後に、彼女の名前で献本が届いた。

     

    ステージ3Bの膵臓がん発見後、2年半闘病した記録が、天国から届いたのだから

    とにかく最後まで読まなくてはいけないという思いとともに、1ヶ月かけてやっと

    先日読了したんだった。

     

    ドキュメンタリーや教育番組の映像ディレクターであった彼女らしい

    客観的で、センチメンタリズムに流れない骨太の闘病記録だったけれど

    最後の章のタイトル

    「死の受容の嘘っぽさ」の文末に書かれていた事に、私は今も立ちすくんだままだ。

     

    =======================

    死はそこにある。

    そして、思わなくていいと、考えなくていいと言われても、考えてしまい、思ってしまう存在なのだと思う。

    だからこそ、怖くて、考えたくなくて、消えてほしい、その存在が消えて欲しい。

    けれども、そこにあるまま、そして、受け入れることができないまま、それでもいいのではないかと思って、最後まで生きるしかないのではないだろうか。

    当たり前のことだけれど、人は死ぬまで生き続ける、だから、死を受け入れてから死ぬのではなくて、ただ死ぬまで生きればいいんだと思う。

                 ー「いのち」とがん 患者となって考えたこと  坂井律子著 岩波新書より引用

    =======================

     

     

     

    もうずいぶん長いこと

    私は、誰もが必ず迎える「死」をどう受容できるのかと思いながら生きてきた。

    でもそうか。

    ただ、死ぬまで生きる。

    受容も、達観も、覚悟もいらない。

     

    それで

    十分なんじゃないか、って

    べー(友人のニックネーム)が最後に教えてくれたから

     

     

    ま、とりあえずは、そんな感じで今日を生きなくちゃって思う。

     

    たぶん

    きっと最後のときには

    あの日の夜のように

    ディジョンの天使が仲間を連れてラッパを拭きながら、黄金の光のあるほうへ

    私を連れていってくれるのかもしれない。

    だからこの写真は、大事に取っておいて、時々眺めるようにしておきたいな、って思う。

     

    =============================ー

    ディジョン美術館はこんなとこ

    https://beaux-arts.dijon.fr/

    日本語のサイトは

    http://www.mmm-ginza.org/museum/serialize/backnumber/0909/museum.html

     

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