「元に戻ること」と、「変わること」。そして変わらない明日が来ることの奇跡と。

2018.07.26 Thursday 19:18
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    ドレーンが取れて、あれだけ苦しかった痛みが徐々になくなり、

    何もできなかった自分が、徐々に歩き、起き上がり、食べ、しゃべるという日常を取り戻しつつあります。

     

    人というのは不思議なものだなー。

    暗黒星雲の中にいたときには、余命の覚悟までして、それが神様のシナリオなら甘んじて受けよう、などと色んな思いをめぐらせていたのに、いざ、治療の可能性が見え始めれば、どんどん欲が出てきて、もっとよくなりたい、もっと生きたいと思い始めた。

    すごいなあ、生きる力というのは貪欲だ。

     

    私の病がわかった時は、みなとても心配してくれたけれど、

    私自身は、ガンの疑い→検査入院→ガン告知→PET検査→MRI検査と進んでいってるわけなので、その折々で

    「ガンはみつかったけど、さほど大きくないらしい」(少し安堵)

    →待て、でも転移しているかも。。。。。。PET検査の結果がでるまで不安不安

    「とりあえず目立った転移ないみたいだ」(ほっ)

    →待て、脳に転移あるかも。ってか脳梗塞とかあるかも。。。。。。結果わかるまで不安不安

    「脳も無事だったらしい」(よかったなあ)

     

    と、一つひとつ「よかったなあ、ほっとしたなあ」という体験をしながら、どんどんしあわせになっていった。

    セカンドオピニオンの予約取れた。よかったよう。

    いい先生だった。ラッキーだあ。

    入院も手術も決まった。ほっとしたなああ。

    友人がガンを知って、真剣に心配してくれている頃に、私はなんだか幸福を感じる瞬間が、そんなわけで結構あった。

     

    あとは細胞診の結果しだいで、抗がん剤の使用があるかどうか、というあたりの不安は残っているけれど、もうここまできちゃったらどうにもならんので、最初ほどうろたえなくなってきた。

     

    人ってたくましい。

    いや、あくまで私のケースは早期発見らしくてラッキーだったというのもあるかもしれないけれど。

     

    以前、ジャズシンガーの綾戸智恵さんが、

    「悩めるというのはまだまだ余裕があるってこと。ほんとの窮地にいる人は悩んでる時間なんてない。

     溺れそうな人が悩む? 悩んでたら沈んじゃうんだから、必死に泳ぐしかないでしょう」

    って言ってるの聞いて、なんかはっとしたことを思い出した。

    立ち止まって悩んでいられる時間の中で、何も幸福がみつからなかったとしても

    溺れないように泳ぎ続けている中では、ちょっとつかまる木があったとか、小さな島があったとか。ちゃんとみつかる小さな幸福感というのがあるのかもしれないなー。

    いや、偉そうなこと言えんけど。

     

    それで手術を終えて

    その時々で最悪だ、痛い、もうだめだと思いながら

    ひとつひとつ前と同じ日常が戻ってくれば、なんだかこれはこのまま、すっぽりと元に戻れるのかもしれない、という気持ちになりかけていたりする。なんというか、よくくも悪くもすごく安易に、知ってる形に戻ろうとしている。

    そんな「復元力」みたいなものが、元から人には備わっているのかもしれない。

     

     

    それで。

     

    以前の日記で書いたけれど、

    ここ数年、ちっとも泣けないのだったという日々のあとの、痛みや苦しみを伴う今回の手術や入院の日々の中で

    何もできず

    ただただ痛みと一緒にベッドに横たわりながら、窓から見える夜空や東京タワーの夜景をぼんやりとながめて

     

    それで

     

    私、おいおいと泣いたんだった。

     

    泣けたよ。

     

    泣いた。

     

     

    ぽろぽろと涙が止まらなくて、

    でも、どうして自分がいまこんな風に泣いているのかを思ったら

    なんだかちょっと、新鮮に驚いてしまったんだった。

     

     

    痛くて苦しくて

    でも、それで泣いているではないのだった。

     

    これまでは、必死に泳がなくちゃいけない中で、封じ込めていた悲しみや怒りや悔しさみたいないろんな感情が、どこかで澱のように溜まってしまっているんだ、と思ってた。

    頑張ってきた、よくやってきたという自分へのねぎらいみたいな気持ちもあって

    泣けるとしたら、そのこころのシャッターが開いて、堰を切ったように感情が溢れ出すのでは、と思っていた。

     

     

    でも

    東京の夜景を見ながら

    ぽろぽろ泣いていた私のココロの中にあったのは

     

    入院から術後のしんどい時に、最大限のことをしてくれたパートナーや息子や友だちのひとつひとつの行いや言葉と

    痛くて痛くて震えて動けない私のからだを拭いて着替えさせてくれたり

    髪の毛が気持ち悪いと言ったら、すぐにシャンプーしてくれた看護師さんや

    毎日はげましの言葉をかけてくれた先生たちや

     

    もう、なんだかよくわかんないけど、

    世界はなんて愛に満ちているんだって>笑

     

    ありがたくて

    ありがたくて

     

    それでおいおい泣いているんだった。

     

    そんな涙の前では、過去の怒りとか悲しみとか、自己憐憫なんてものは本当に矮小で

    それでもう

    なんだか自分は人生で十分にそんな涙を流してきたのだから

    これから先はもう、今日みたいな涙だけでいいいや、と思ったんだった。

     

    メンタル強すぎて雲の上の人みたいだけど、樹木希林がそんなこと言ってたなーって思い出した。

     

    ”人がうれしかったりした時に、
    泣くことが多いわね。
     
    悔しい、悲しい、
    で泣いたことはないわね。
     
    「なんてすてきなことを言うんだ」
    っていう時に泣けてくるね”

     

     

     

    足りなかったのは、そこだったのかなー。

     

     

     

    今日こんなことを書き留めているのは

    からだの調子が戻ってくると、気持ちも暮らしも「復元力」が働いて、昨日と同じ延長線の今日に戻ろうとしてしまいがちだけれど

     

    こんな体験めったにないのだから、感じたこと、経験したことはちゃんと覚えておいて

    昨日とは違う今日を生きられるようにも、したいなあと思ったから。

     

    早期発見よかったね、治っちゃうよ、すっかり元通りだよ

    と言ってくれる人たちもいるけれど

    それとはなんかちょっと違う気がしている、ってのもある。

     

    年をとって

    誰かに付き添ってもらって、たくさん時間を割いてもらって

    足を、からだを拭いてもらい、髪を洗ってもらい

    そんな「有り難い」ことを当たり前と思うような年のとり方を絶対にしない、とも思ってる。

    去年の父の入院から介護、お葬式までの間の殺伐とした時間も、私の涙を止めていた理由なのかもしれない。

    だから、ちょっと陳腐な言い方だけれど、今回のことは神様から私への贈り物なんだと思う。

     

     

    同時に

    まだまだ先のことはわからず

    これから自分がどれだけ生きられるかもわからないけれど

     

    今日と同じ明日が当たり前のようにめぐってくることの奇跡みたいなことも

    忘れずにいようと思ったんだった。

     

    生きるって不思議で、愛おしいね。

     

     

     

    ということで、ちゃんと泣けたよ、というお話でした。

     

     

    今日もぽろぽろ泣いて寝る。

     

     

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