一日で人生が激変する。そんな時みんなどんな気持ちだったのか、私、ぜんぜん知らなかったよ。

2018.07.11 Wednesday 09:47
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    ガンになった。

     

    というか、正確にはガンがみつかった。

     

    先だって、メメント・モリという日記を書いたけれど、それはわかる前からずっと考えていたことだった。

    タイミング的に書き留めておかないと、あとでわけわかめになるなあ、と思って書いておいて、よかった。

     

    本当に不思議だ。

    今回のことは青天の霹靂だ、と思ったけれど

    たぶん、からだの奥底で、頭のどこかで、心の片隅で、

    ちょっと前から、わたし、ちゃんとわかっていたんじゃないかと思う。

     

    ということで、ここからしばらく、このブログはこの手の内容のことが増えると思う。

    避けたい人は避けてほしいと思います。

    誰でも、近寄りたくない話題は、あるから。

     

     

    それでもね

    ちゃんと、書いておきたい、と思った。

     

    私自身が、わかった日からそれを受け止めていく間に自分の中に起きたことが

    もう、ぜんぜん予測不能で、どうしていいかわからなかったから。

    いまはガンは治る病気だ、大丈夫だ、といくら言われても、私の中身はぜんぜん大丈夫じゃなかった。

    メメント・モリなんて考えていた時期が続いていたから、なおさら、だ。

     

    あれ?

    私のまわりにはガン告知を受けて治療している人が結構いるのに

    最初の衝撃については「辛かった」「しんどかった」というような言葉でしか受け止めていなかった気がする。

    辛かった、という言葉だけで済むものだったんだろうか。

    なんか、もっともっといろんな気持ちが竜巻のように渦巻いていた。

     

    人によって、部位によって、進行によって

    それぞれみな違う体験だと思うけれど、記録とかじゃなくって、

    私はわたしが感じたことを自分の言葉で書いておきたいなーと思ったんだ。

    気持ちが落ち着いて、あとからきれいな言葉でまとめてしまう前に。

    達観して、大人の発言をし始める前に。

    (あー、もう少しそんな段階に差し掛かっている気もする、、、、>苦笑)

     

     

     

     

    誕生日の3日前に、特定健診を受けた。

    その日の夕方から、翌日土曜日の昼まで、普段ほとんど鳴らない(鳴っても出ない>笑)固定電話がガンガンなり続け

    どういうセールス? と根負けして出たら昨日の医師からだった。

     

    週明け、すぐ来て、という。

    てっきり、ずっと高かったLDLコレステロールのことだと思った。

    ほんで、のほほんと、でかけた。

     

    のんきにしてる私の横で、とりあえずCT撮ってきて、すぐ! と真顔の医師がいて

    映像を見たら

    すぐ検査ができる病院へ、紹介状書く、ほんとびっくりしちゃうね、ごめんね、あさってとか、しあさってとか!

    とにかくすぐ。

     

    医師が拡大したり縮小したりしているCT画像は、私の肺のものだった。

    スターウォーズに出てくる暗黒星雲のような渦巻いた光が、あった。

    なんだ、これ。

     

     

    このあたりまでは当事者意識がなく

    それでも、紹介状を書かれた、まったく知らなかった病院に出かけてみたら

    あれよあれよと検査入院となり、次から次へと検査が続き

     

    今日、最初の検診を受けた日から、ちょうど1ヶ月が経ったことになる。

     

    まだ一ヶ月だけど、もう一ヶ月で、この時間はからだの状態を調べることでほぼ費やされていたから

    治療展望が見えない暗闇の時間だった。

    前向きになんてぜんぜんなれなかった。

    細胞診検査、PET検査、脳のMRI検査と続くたび、もう、すべて一番悪いシナリオばかりが頭に浮かんだ。

     

    なんでいっぺんにわからんのだ。なんでこんな時間がかかり、体と気持ちの負担ばかり降り積もっていくんだ。

    予約、予約、予約。何でも予約。

    時間がかかればかかるほど、暗黒地帯をさまようじゃないか。

     

    今日と同じ明日が続いていくという前提が崩れてしまい

    今困難にあっても、未来で解決できるという展望が見えない時間。

    自分の努力も工夫も、何者も抗えない時間に突然放り込まれて、悄然とした。

     

     

    それ、なんか

    こんなことを「考えていた」とか「思っていた」というのとも違うような気がする。

     

    からだと頭の気持ちが、まったく統制が採れず

    ただただ、衝撃を受けてた。

     

    そうだなー、例えたら

    からだの中にミキサーがガーッと回ってる感じ。

    思ったり考えたりする暇もなく、言葉で言い表せるわけでもなく

    ただただ、自分の中にあるいろんなものが一斉にガオガオとミキサーにかけられて

    それが四六時中続いているから、なんかもう、自分全体が内側から打撲傷みたいな>笑

    体調も気持ちもコントロールできず、ただひたすら、不意に粉砕されるような時間が続いた。

     

    ああ、ミキサーみたいだなぁと、かろうじて気づいたけれど

    中身を回っているのはジュースみたいなきれいなものじゃまったくなく

    もっと、タールみたいな黒くて茶色くて、どろーっとしたもの。

     

    ステージや転移状況がわからない間は、そんなタールみたいなものでからだが満たされていた。

    時々、ガーッとミキサーが動く。

    仕事や家事やともだちとのいつもの日常の延長の時間を過ごしている間は

    静かに気持ちが落ち着いて、あれ? なんでもなかったんじゃないかな? と一瞬錯覚する。

    そんな一瞬の隙きをついて

    どろーっとタールがからだを覆っていく。

     

    肺だった、というのも大きかった。

    なんで、肺?

    死亡率も転移率も高いんじゃなかったっけ?

     

     

    昔「Xファイル」っていうテレビドラマがあって、あの中で異星から移植して来た生物が「ブラックオイル」というウィルスに感染するというシーンが何度も出てきた。

    ふだんは人間の姿をしているんだけど、この黒いオイルに感染した人は、何かの折に目がどろーんと真っ黒い液体で覆われて、白い部分がなくなり、そのうち鼻や口から黒いタール状のものが溢れ出したりする。

     

    あんな感じだった。

    ブラックオイルは、別名「ブラックキャンサー」と言うらしい。

    まんまやん。

    そういえばあのドラマには、肺がん男ってのも出てきたな。

    楽しく見ていたのに、今はもうその言葉さえ聞きたくないわい。

     

     

     

    そんなわけで、だいたいのステージがわかるまでの間、

    私の中身はほぼ、そのブラックオイルみたいなもので覆われていたような気がする。

    コントロール不可でミキサーが動いて、どろーっとしたブラックオイルが撹拌され、

    一瞬忘れて静かに暮らしていても、ふいをついて、ブラックオイルがからだを満たしていく。

     

    なんだ、この比喩。

    何の役に立たない気もするけど、そう思ってたんだから仕方ない。

     

     

     

    情報が少しづつ見えるようになって

    ブラックオイルのどろどろ感は減った。

    意味不明の不安や恐怖やわけわかめ感に、少しづつ言葉での解説がつけられるようになった。

    時間、かかった。

    逆に言えば、そういう時間は延々と続くわけではないので、時間が解決していく、と言えるのかもしれないけれど

    最中にいる間は、本当にどうしていいかわからなかった。

    この時間、ちゃんと誰かサポートしてくんないと無理と思ったので

    知り合いのカウンセラーさんにサポートグループを教えてもらった。

     

    ほんでも、そこに連絡を取ってでかけていく気持ちの余裕はなく

     

    病院にケースワーカーがいて援助します、と言われたけれど

    治療方針や医療情報の援助ということだったので、ただうろたえている私にはまだ早すぎるらしく

    仕方なく、検査を担当した呼吸器内科の先生に頼んで安定剤を処方してもらった。

    えー、そう簡単に安定剤とか出さないよと言われたけど、お守りとして持っておくだけでいいんです、と頼んで処方してもらった。

     

    たまに、それに頼ってほんと助かった。そういうの、どんどん頼ればいいって思った。

     

     

    なんか、自分弱かったなー、

    ぜんぜん、へたれだなー。

     

    まわりの人が、みんなもっと強くてしっかりしていて立派なように思えた。

     

    親戚にガンがほとんどいなかったこともあって、保険の準備もしていなかった。

    てっきり、脳梗塞とか婦人科系と思っていた。

    いろいろもっと、ちゃんと準備していてよかったという友人の話を思い出し

     

    自分はなんていろいろ下手くそなんだ、と落ち込んだ。

    うまくやった、運がよかった、準備しておいてよかった、という賢い知人友人の言葉が渦巻いて

    それをできなかった自分が、おそろしく間抜けに見えた。

     

    なんでガン保険入ってないんだ!

     

    自分の人生、ずっとそうだったような気になった。そうだ、ずっとずっと、ぜんぜんだめだった。

    意味もなく自分を責めた。

     

     

    同時に

     

    これまで周囲で病気になった人の話題に及んだときの会話が急に蘇ってきた。

     

    「○○さん、ガンだって」

    「どこ?」

    「膵臓」

    「あー、きついね。肺と膵臓は見つかったところで手遅れってこと多いから」

    「そうなの?」

    「手術したっていうから、まだそれだけでも救いだね。転移してたら手術もできないから」

    「!!!???」

     

    私、その会話のあと、その膵臓ガンの子からメールもらって、すぐに返事できなかった。

    怖くって。そうなの? みつかったところで手遅れなの? って。

    でも本人に詳しく聞けなくて、怖気づいていた。

     

    あれ? じゃあ、肺も?

    そうなの?

    先生手術すれば大丈夫って言ってたけど、それって「まだ救い」ってレベル???

     

     

    過去の何気ない誰かとの会話をこんなに覚えてる自分に驚いた。

    そして、周囲で何度となく繰り返されてきた

     

    「○さん、ガンだって」

    「△さん、肺に転移したって」

    って話をするときの、急に声を潜めてひそひそ話をする人たちの姿が思い浮かんだ。

     

    「肺に転移したのか、それもうだめだな」

    「骨に転移? 背骨骨折したりしたら、寝たきりになっちゃうんでしょ」

     

    ひそひそ、ひそひそ。

     

     

    ああ、私もそんな風に言われるんだ。

     

    ガンだって。

    肺だって。

    あー、きついね。

    かわいそうに。

     

    ひそひそひそ。

     

     

     

    なんだ、この被害妄想みたいの。

     

     

     

    アホみたいだけど、もう、自分の中身はそんなことでいっぱいになっていた。

     

     

    これまでのことを、すごく反省した。

     

    私、もう人の病のこと

    ちゃんとわかりもしないのに、そんな風にひそひそ言わない。

     

    簡単に、もうだめだね、なんて会話に安易に乗らない。

    絶対に。

    それ、あとで全部自分に戻ってくる。

     

     

    同時に、病が語られないことについても考えた。

    状況が見えないから、どう扱っていいかわからなくなるんだ、と。

     

     

     

    自分の病気のことや、それで感じたこと、いまの状況をちゃんと書いていこう、語っていこうと思ったのは

    そういう理由もある。

     

    わからないことで、ひそひそ言われたくない。

    見えないことで扱いづらさを感じられたくない。

    大切に生きてきた自分の人生を

    ただ病気になったということだけで

     

    かわいそうに、

     

    なんて言われたくない。

     

     

     

    ほんだもんで、書いている。

    「言われたくない」と思ったことなんて、たぶん誰も言わないのかもしれない。

    だから、自分のことだけを考えておけばいいんだと思う。

    でも、弱ったらそんなことを考えてしまう自分がいたことも確かだった。

    だから、そんな自分のために、書いている。

     

     

    病気のことを、周囲に言わずに生きていく人もいる。

    私、ハタと気づいたけど

    こんなことを書いていたら、仕事来なくなるのかもしれない>笑

    あー、そんじゃ無理ですねーって。

    しばらく闘病ですよねー、じゃあ他の人にって。

    だよなー。

     

    それでも、書いておきたいと思った。

    なんというか、自分の尊厳のため、みたいな。うまくいえないけど。

     

    同じ思いをした人がきっとたくさんいて、

    これから同じ思いをする人がいるかもしれなくて

    まったく違う人もいて、違う意見もあって。

    そんなの含めて全部、なんか誰にも言わないという選択肢は選べなかったー。

     

    自分は自分で思っていた以上に、へたれだった。

     

    へたれてへたれて、みっともないぐらい弱かった。


     

     

     

     

    そんでも、へたれて弱くなって、

    大人な対応も立派な態度も取れなくなって、

    いますごく思ってるのは

     

    ずっとよく見えないでいたけど

    自分の周りにはどんだけ優しい気持ちや愛に溢れていたんだろーってこと。

    あ、なんか妙にまとめた感じのこと言い出してる>笑

     

    でも、それ、ほんと。

     

    一人暮らしだった私だけれど

    助けて、と言ったら

    ちゃんと気持ちを向けて手を差し伸べてくれる人たちに囲まれているってことをいま、教えてもらってる。

     

    ありがとうございます。

     

    そうして、弱いへたれな自分に向き合い、

    助けてもらう練習を、いま、している。

     

    病はみつかったら、もうそこから先に進んでいくしかなく、

    取り巻く状況も、自分の気持もどんどん次に向かっていて、今ここにある私の気持ちは、明日には別のものになっていたりする。

     

    ありがたいことに、私のガンは手術で治療ができて、その日程が昨日決まったので、前に書いていたこの日記を今日公開しようと思う。暗黒星雲の中にいた私の気持ちは、昨日を境に別の場所に移動した気がする。だから、この日記の内容は、書いておいて本当によかったって思う。ほんと、人の気持って不思議だなー。

     

     

    いま、闘病って言葉は、なんか違う気がするから、ガンと「闘う」とは思っていない。

    そして「頑張る」となるべく言わないようにしている。

     

     

    そんなあたりのことを、また、書くと思う。

    ゆらりと、向き合っていきます。

     

     

    category:Dairy Tokyo | by:武蔵野婦人comments(4) | - | -
    Comment
    えーと。初めてコメント書こうとしてますが、どう言えばいいのか。頑張って、は他人が気軽に言える言葉ではないというのは、そりゃそうなんですが。
    正直な自分の気持ちは、えー、あなたの文章が好きです。美大講義の感想の記事を見つけてからこっち、ずっと読んでます。写真のセンスも大好きです。
    10年以上前、個人がブログを気軽に発信してた頃に比べて、今は読みたいブログがめっきり減ってしまいました。著名ブロガーの方なら、炎上リスクあっても続けるメリットあるのかも。この件については私はこう思う、てネットで表明することのリスクが、個人にとっては今は大きくなり過ぎてるのか。インスタでは短すぎる。そんな中で、貴女のブログから伝わる感覚が、私にとって大事なものになってます。
    できれば、ブログも続けてください。私の勝手な希望ですが。

    • 松猫
    • 2018/07/11 2:56 PM
    どうぞお大事になさってください。
    • k子
    • 2018/07/12 1:43 PM
    松猫さん、コメントありがとうございます。
    文章が好きと言ってもらえるのは、本当にうれしいことです。ブログ書くことに意味があるのかなあ、とこのところ思うことが増え、そんなこともブログに書きつつ、でもたぶん、書くことを一番必要としているのは自分自身だと思えてきたので、やはり書くことにしました。読んでいただけるのはうれしいです。続けてみたいと思います。感謝です!
    • 武蔵野夫人
    • 2018/07/13 10:12 AM
    K子さん、ありがとうございます。
    自分で自分を大事にして、たくさん人に甘えて助けてもらう、というミッションが神様から来ているようなので、しっかりやっていこうと思います。
    • 武蔵野夫人
    • 2018/07/13 10:13 AM








       

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