「人生は必要な時に、必要なぶんだけ与えてくれる」ってことをフランスで教わる

2017.10.23 Monday 11:20
0

    フランスでレジデンスをしていた時に、本当によくしてくれたアーティストの友人たちと食事をしていたときのこと。

     

    一人がこんなことを言った。

     

    「大事なのは自分を信頼すること。自分の創り出すものを信じて自信を持つこと。

     下手にいろいろ考えすぎて余計なことをしないで、ただ自分の信じるものを作り続ける。

     そうしてれば、どっかでなんとかなる。

     私、今回本当にそれを実感するできごとがあったの」

     

     

    なぜそんな話になったかというと、滞在中のいろんなことにお礼を言いたくて

    私が自分のことをこんな風に表したからだった。

     

    「私はたぶん、日本ではきちんとやっているほうだと思う。

     人によっては、成功したほうだ、という言い方をするのかもしれない。

     本もたくさん出すことができたし、講演をさせてもらったりしながら子供を一人で育てることもできた。

     でもね、どこまでいっても、いつも不安で自分に自信がなかった。

     これでいいのかな、って。

     

     特にアートについては、どんなに楽しく描いても、自分がやっていることに自信が持てなくて。

     昔から父親に「お前に才能なんてあるわけがない」って言われ続けたのもなんか心に残ってしまっていて

     絵を描いていてもどこからかそんな声が聞こえてくることがあるんだよ。

     でもね、今回の滞在で、そんなこと気にしないでいいんだな、って思えるようになった。

     個展に来てくれた人たちがかけてくれた言葉にたくさん勇気をもらったし

     あなたたちに会えたことでたくさん心に栄養をもらった。いっぱいありがとう」

     

    (いや、たぶん実際のフランス語はもっと稚拙>笑 これはかなりの意訳)

     

    そう言ったら、彼女は私の手を取って

     

    「あなたは立派に仕事をしてひとりで子供を育ててきたんだよ。日本で。

     あなたはFemme indepandante、自立した女性。それだけでもすごいこと。

     

     それに、あなたは本当の才能の持ち主だということがわかってる?

     それは今回のことで証明されたよ。信じて、自分を信じて」

     

    としっかり私の目を見て言ったのだった。そして、最初に書いたようなことを話し出したんだった。

    それは、こんなこと。

     

     

    「あなたに貸したアトリエのある建物を、いろいろあって私は去年購入したんだけど、

    修理のお金やいろんなことが重なって、少し前まで本当にどうしたらいいんだろうって思ってたの。

    どうしよう、絵だけ描いていてもだめだから、もっと売れそうなアクセサリーを手ごろな値段でいっぱい作ろうか、とか

    もっと売れそうなグッズを作っていかないとダメかな、とかいっぱい考えてた。

     

    そうしたらね、ちょっとした事故で足の骨を折っちゃった。

    動けないし、もう本当にだめだ、アトリエは売ろうかと思って家にこもっていたら

     

    或る日突然電話がかかってきたの。

    私が描いた中で一番大きくて一番高値をつけていた絵を、買いたいって人から。

     

    小さいアクセサリーだったら、何日もかけて何十個も作って売り続けなくちゃならなかったと思うけど

    1本の電話で、私が一番描きたくて描いたものが、ちゃんとその値段で売れていったの。

    それで私、思ったんだ。

    自分が本当に創りたいものを、信じて創り続けようって。

     

    こうしたほうが売れそうだ、受けそうだと考えて形を変えてしまわずに

    ちゃんと自分を信じて創り続けていれば、どこかで何かが起こる。

    人生はそう捨てたもんじゃない、って。

     

    あ、でもね。

    修理のお金を払ったら、絵が売れた分のお金はなくなっちゃったのよ>笑

    だから、また最初からなんだけど

     

    でもそうして、人生は必要な時に、その人に必要な分だけを与えてくれる。

    そう思うの。

     

    それ以上あるに越したことはないけど>笑

    でもね、持ちすぎてもいろいろ見失う。

    だからいづみも、自分を信じて創り続けて」

     

     

     

    人生は、必要な時に、その人に必要な分だけを与えてくれる。

    ちゃんと自分を信じて、本当にやりたいことを続けていれば。

     

     

     

    それ、なんだかとっても腑に落ちる気がして

    なんだか心にあったかさがいっぱい溢れたんだった。

     

    そうだなー、自分の人生も、振り返ってみたらそういうことの繰り返しだった、と。

     

    ヨーロッパ最大級の版画の工房村で。いつかここで銅版画をしてみたい!

     

    大事なのは自分を信じること。

    自分を信じるに足るだけの、好きなことを持ち続けて、自分に嘘はつかないこと。

     

    外側からの評価や経済軸みたいなものでいろんな邪念にまみれてしまうことが多いけれど

    その都度自分に立ち返って、何がしたかったんだっけ? って振り返りながら、

    そうやって今までもやってきたような気がして。

     

    そんなこと書くと、順風満帆に聞こえちゃうかもだけど、いつもピンチと隣り合わせだった。

    ああ、困ったなあって立ちすくんだり、もうこのままダメなんじゃないか、

    とアルマジロのように丸まって冬眠状態になっていたりすることがたくさんあった。

    気持ちのバランスを崩して、それが体調不良につながってしまったり。

    そんな時、すぐに幸運の女神が現れて、めでたし、なんてことはまったくないけれど

    でも気づくと

    あれ?

    ああ、ありがとうござます。うれしいいよ、って出来事が小さく起きたり

    いいんですか? 助かるなー、なんて仕事がちょろんと舞い込んできたり

    え? こんなんがあったっけ? という小さな臨時収入があったり。

     

    でっかくどかーんと大成功! なんて出来事はないけど

    困った ーじたばたせず待つ ーあれ、なんか起きた ーありがとう ー気がつけばまた困った ー待つ ーあれ?

    なんていう繰り返しだったなーって、長い目で振り返ってみると思う。

     

    一方で、

    これ、本意じゃないんだけど、もう動き出しちゃったからやるしかないのかなあ、気が重いなあ

    なんて思っていたことが、ひょんなことから白紙になったりとか。

    それ、経済的には打撃だけど、気持ちは救われた、なんてこととか。

     

    ほんと、彼女が言う通り

    人生って、必要な時に必要な分だけを与えてくれるものだ、と思えれば

    なんかいろんなことが楽になると同時に、ちょっとした希望も湧いてくる気がする。

     

    もちろん、「必要」な部分をしっかり確保することは大前提で

    それが確保しにくくなっている世の中なんだけれど

     

    でも、必要以上のものを手に入れようとして苦しくなるのは、なんか自分には合わないなーって思ったりもする。

     

     

    こういうこと、標語みたいにみんなに伝えたいってわけじゃなくって

    ただ、今の私にとって、その言葉がしんみりとじわりと心に染み渡って

    そうだなあ、その通りだなあ、これからもそんな感じでやっていけるといいなあ、って

    そう思ったんだよ、ってこと。

     

     

     

    今の日本は、本当に「必要」な部分がどんどん減ってしまっているのに

    別の場所で必要以上のものを手に入れようとしている人たちが

    いろんなことを苦しくしているような気もして。

     

     

    だから日本に戻って

    また、彼女の言葉を噛み締めたんだった。

     

     

     

    最後の日、電車のプラットフォームで彼女たちは、

     

    「いづみ、あなたはほんとのアーティストだよ。自分を信じて。自分の信じることを続けて」

    と、目にいっぱい涙をためて私を見送ってくれた。

     

     

    ひょんなことからいろんなことが実現したフランスでの個展の体験だったけれど

     

    ああ、私はこの言葉を聞くために

    ここに来たんだなあ、って心から思えたんだった。

     

    たぶんそれが

    私が一番必要としていたこと。

     

     

    そういう風に、「アート」や「アーティスト」が存在できる場所であるフランスは、本当に素敵なところだと思うし

    私も、こういう言葉を、ちゃんと誰かに伝えられる人間でいたいなあ、って強く強く思う。

     

     

    日本で「私はアーティストです」なんて言ったら、結構ドン引きされちゃうわけで

    いろいろアートを取り巻く状況は厳しく、そんな中でいろんなことに自信が持てずに来たけど

    心の中で自分を信じる、ってことはとても大切なことだということを、彼女たちが教えてくれた気がする。

    そして改めて、これまで自分がやってきたこと、これまでの自分の仕事にもちゃんと自信を持とうと思えるようになった。

     

    へこたれながら、ピンチになりながら

    でも

    きっと小さくはなんとかなるんでね? と思えればそれでいい感じで。

     

     

     

    ちょっとこれからの自分が、楽しみになりました。

     

     

     

     

    今日はこんな感じで。

     

    category:アートと暮らし en France | by:武蔵野婦人comments(6) | - | -
    Comment
    初めてコメントします。
    が、長らくももせ様のこのブログの愛読者をしております^ ^

    今回のブログがまたまた心にしみて、お礼をどうしてもお伝えしたくて思わず書き込みます。
    自分の中で起こってる事と重ね、じぃーんと心が温かくなってる人がここにいます。

    もともとは、日々の食事作りが気持ち的に厳しい時に出会った記事が出会いですが、笑、それ以外もあらゆる視点、書き口が大好きでブログの更新を楽しみにしてます。

    ありがとうござまいます。これからも、ひっそり&しっかり楽しみにしておりますね。
    • まっひー
    • 2017/10/26 8:21 AM
    はじめまして。
    読ませていただいてすごく心に響きました。
    なかなか自分を信じることをしてこなかったせいか、不安になることも多く、いずみさんの自分を信じる、というお話を自分のためにじっくり読んでいます。
    自分を信じれるきっかけになりそうです。
    また記事楽しみにしています。
    ありがとうございます。
    >まっひーさん
    コメントありがとうございます! 長いこと読んでくださっていると伺い、面映ゆいと同時にとてもうれしいです。お礼なんてとんでもない。こちらこそ、拙文を読んでくださってコメントいただけるのは、とてもありがたいことです。いつもこんな感じのことばかりしか書けないのですが、これからもどうぞよろしくお願いします!
    • 武蔵野夫人
    • 2017/10/28 10:32 PM
    >sakamotoさん はじめまして。読んでいただいてありがとうございます。
    「自分を信じる」ことの大切さを身にしみながら、今回渡仏先で言われた一言で、ぜんぜん自分を信じられていなかったんだなあと改めて思いました。きっと行ったり来たりなのだというような気もします。でも、一瞬でも信じられるときがあることが、人生をぽっと明るくしてくれるのだなあと思いました。
    「必要な分」があればこそだろう? という反応もあるだろうと覚悟しながら書きましたが、心に響くと言っていただけてうれしいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします!
    • 武蔵野夫人
    • 2017/10/28 10:36 PM
    ももせさん、久しぶりにブログを読ませていただき、心に響いて何度も読み返しました。
    私もアーティストであります。でもアートで食べられてなくて、自信も持てず、才能があるって思えなくてずっと鬱々としてました。外の評価もなんだかんだ言ってものすごく気にしてましたし、それに左右されていました。
    売れていく人や活躍している人を横目に見ながら、売れない、お呼びがかからない=ダメなアーティストと自分のことを責めてしまいました。そして自分に才能がないということを知るのが何よりも怖かったのです。
    でも才能ってなんでしょう?人に言われたから才能があるとかではなくて、自分が喜びを感じて制作しているかどうかが大切なのだなと、ももせさんのブログを読んで気がつきました。外の声に振り回されるより、自分を信じて心に正直に制作した方が豊かな感じがします。
    これからも自分を信じて制作していきたいと思います!ありがとうございます。ブログこれからも楽しみにしています。
    • おやじみかん
    • 2018/02/12 3:30 PM
    >おやじみかんさん
    温かいコメントをありがとうございます。自分を信じることの大切さを感じつつ、実際には私もおやじみかんさんと同じです。評価が気になるし、才能がないことを知るのが怖いです。毅然とできずに、うろうろしながらの毎日です。
    でも、そんな風に創作をしている人がいることを知ることで、自分を信じて正直に制作しようと、改めて思いました。ありがとうございます! いつかどこかで逢えるといいですね。これからも一緒に頑張りましょうー!
    • 武蔵野夫人
    • 2018/02/19 9:30 PM








       

    Calender
       1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031 
    << July 2020 >>
    Selected entry
    Category
    Archives
    Recent comment
    • 母と娘の赤いバラ ー 母子確執による体調不良が娘にだけ残ることの不思議について考える
      武蔵野夫人
    • 母と娘の赤いバラ ー 母子確執による体調不良が娘にだけ残ることの不思議について考える
      あおい
    • Covit19で起こるメンタル不調にどう向き合えばいいのか、ってことについて
      武蔵野夫人
    • Covit19で起こるメンタル不調にどう向き合えばいいのか、ってことについて
      キョウコ
    • 孤独のグルメから「きのう何食べた?」、そしてはるみさんのこと。未来の小さな灯りをさがして、今年もよろしくです
      武蔵野婦人
    • 孤独のグルメから「きのう何食べた?」、そしてはるみさんのこと。未来の小さな灯りをさがして、今年もよろしくです
      武蔵野婦人
    • 孤独のグルメから「きのう何食べた?」、そしてはるみさんのこと。未来の小さな灯りをさがして、今年もよろしくです
      ニート男性
    • 孤独のグルメから「きのう何食べた?」、そしてはるみさんのこと。未来の小さな灯りをさがして、今年もよろしくです
      あっか
    • 離婚して一人で子育てをして、しんどくなったことについて。自由に生きることには大きな責任が伴うってことについても。
      武蔵野夫人
    • 離婚して一人で子育てをして、しんどくなったことについて。自由に生きることには大きな責任が伴うってことについても。
      ゆうこ
    Recommend
    Link
    Profile
    Search
    Others
    Mobile
    qrcode
    Powered
    無料ブログ作成サービス JUGEM