質問と意見がどんだけたくさん盛り込めるか、ということがどうやら大切らしいフランスでの会話について

2017.10.02 Monday 00:53
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    以前どこかで書いたと思うのだけれど、東京でフランス語を習っている時に、映画が好きだと話したら

    「好きな監督は誰?」と聞かれ
     
    「アルモドバルが好きだ」と答えたら
    「彼の映画のどういうところが好きなのか」と言うので
    まだつたなかったフランス語で
    「んーっと、色彩がとても鮮やかなところ」と答え、これで話は終わりかと思ったら
    「鮮やかというけれど、日本にも色彩が鮮やかな監督はいるわ。例えば大島渚とか。
     あなたはアルモドバルの色彩について、どういう印象を持っているの」と食い下がられ
     
    うわー、うわー
    これは本当に困ったと思う一方で
     
    こういう食い下がり方をしてくる人が日本ではあまりいないので
    なんて楽しんだろう、とワクワクしたことを覚えている。

     
    それで今、フランスでありがたいことに個展を開かせてもらっていて
    さして大きな街ではないので、さほどお客さんが多いわけではないけれど
    それでも覗きに来てくれた人にお礼を言うと
    たいてい皆が何か話して帰っていってくれる。
     
    ーこれはあなたが創造したパーソナリティ? いいわね、あなたはこれを何年ぐらいモチーフにしているの?
    ーすごく繊細でデリケートな作風だけれど、どういう画材で描いているの?
    ーあなたはこれをこの街の気配だと言うけれど、なぜこの色を使ったの? そしてなぜ、これはこんなに力強いの?
    ーこっちには少し光が見える気がする。でもこちらはすごく暗い。この違いは何?
    ーこれが気に入ったから買おうと思うんだけど、あなたはこれをどの向きで置くつもりで作った?
    (いや、買ってくれるあなたが好きなように置いてくれていい、と言うと)
    ーあなたがどう置きたくて作ったのかを知りたいの。この向きね、わかった、そう置く。

     
    まず見てくれた人の解釈で、ありきたりではない(すごいわね、いいわね、素敵ねとかではなく)
    独自の解釈を言葉にしてくれて
     
    そして、そのあとに必ず質問がくっついてくる。なので、何かしら答えなくてはならない。
     
    ーそうですね、ここ4年ぐらいです(考えたこともなかった! たぶんそんくらいだろう)
    ー柿渋と墨と自然の土を使っていて(以下、作風についてはフランス語で説明できる準備が必要)
    ー丘の上のブドウ畑に立ったとき、この地のえもいわれぬ力強いエネルギーを感じたので(言われて初めてそう思った)
    ーそれは夕暮れと朝日のイメージを表現してみた(んだったかわからんけど、なんかそんな気がしてきた)
    ーこっち向きに置くつもりで作った(ってことを今初めて考えたよ)


     
    みたいな感じで、大抵答えを用意していないものが多いんだけど
    問われて初めて、自分の中での答え探しが始まって
    それが思いがけず、とても楽しい作業になるもんなのである。
     
    作品の意図を説明せよ、と言われて準備した自分の解説を延々と話すよりも
    予期せぬ質問をどんどん投げかけられるほうが、格段に自分の世界が外に広がっていく。
    この開け放たれ感というか、ちょっと苦難だけれどM的に喜びに満ちてくる感じが
    私の世代で東京で体験できる機会があまり多くないので、とても好きだ。
     
    ほいでも、なんでもかんでもすぐ答えられるわけではないので
    うーん、と返答に詰まることもある。
    沈黙で会話が途切れるとちょっと気詰まりな雰囲気になってしまうので
    そう言う時は、
     
    「それはちょっと答えるのに難しい質問だ、だから考えさせて」と前置きして
    「あなたはどう思うの?」
    とまた質問を返していけば
    とりあえず会話は詰まらずにつながっていくことになる。

     
    絵巻物がなんだか人気です。
     
    その
    「とにかく質問」

     
    っていうのが、私がフランス語の会話をフランスで習い始めた時に、最初に言われたことだった。

     
    もう、なんでもいいの
    なんか聞け、と。

     
    とりあえず、なんか言われたら、はいと言って答えるだけじゃなくて
    相手にも必ず質問を返せ、と。
     
    そうじゃないと、そこで会話は終わってしまうし
    質問が戻らなければ、あなたはこの話題に興味があまりなかったと判断されて
    相手はどんどん次の話題に移っていってしまうから
    フランス人と話すときはとにかく質問をしなさい、そうすれば会話が続くから、と。
     
    もう、口を酸っぱくして言われ続けたのだった。

     
    ーなんでそう思ったの?
    ーそれのどこが好き?
    ー今起きているこのことについて、どう思う?
    ー日本ではこれについてどういう意見がある?

     
    質問を投げかけ続ける。
     
    これは、最初は全く慣れない作業で戸惑ったけれど
    ちょっとコツがわかってくれば、質問をするというのは
    コミュニケーションの上でも
    また、質問されることで呼び出される自分の新たな面に気づくという意味でも
    とても意味があることなんだ、ということがわかってきたように思う。

     
    ということで、こちらで展覧会をしていたら
    いろんな解釈の言葉をもらって楽しかったし
    思いもかけない質問もたくさん飛びだして、すごくうれしかった。
     
    なんつーか。
     
    日本では自分を意見をガンガン言う女とか>笑
    当たり障りのない範囲を逸脱したことを話し出す女とか>笑
     
    たいてい敬遠されるということを経験上知っている(ような気になっている)ので
    そういうスイッチをなるべく入れないようにしているんだなあと自分で気づいたりもした。
    (ほんで、時々こういうブログに書きなぐったりするのだ、好き勝手な意見を)。

     
    ここ数日で
    Fukushimaの現状であるとか、日本文化もかなり難しい局面にあるんじゃないの? とか
    日本の右傾化などについてもよく質問された。
     
    ほんで昨日は作品の話から流れ出して、日本は過去2回も原爆の被害に遭っている上に
    福島の事故もある国なのに、原発の抑止が進まないことについても意見を求められた。
     
    東京の急速な都市化についてとか、一方でフランスでもパリ市街が拡大して景観が崩れていることとか
    海洋のプラスチック問題とか

     
    私のようなつたないフランス語でも、「話さなくていけない」のではなく
    「話したくて仕方がない」質問がどんどん投げかけられれば、身を乗り出して話したくなる。
    そんな会話のキャッチボールみたいなもんが、フランスでの会話の面白さなんだと思う。
     
    日本で普段私がしている会話とは、これはかなり違っていて
    日本語では当たり障りのない会話、みたいなものに多くの時間を割いているような気がするので>笑
    こちらでは下手くそなフランス語でも、話すのは、かなり楽しい。

     
    ただ、やっぱりその会話を楽しむためには
    何かしら投げ返せる意見を持っていないといけない気がする。

     
    なんだろう。
     
    日本だと、雑学とか情報とか、いろんなことを知っていたり、いろんな体験談みたいなものを話せるのが重宝で
    聞き役は上手にウンウン、と聞いて相槌を打てる人が重宝がられるけど
    (さすがですね、知りませんでした、すごい!、センスいいですね、そうなんですかー! のさしすせそ技術みたいな>笑)
     
    とにかく質問され続けるので
    何かしら自分の意見を言わないと先に進まないことになり
    知識や体験も大事だけど、「こう思う」みたいな解釈がすごく求められる場面が多いのが
    日本での会話との違いかなー、と、まあ、ほんとつたないフランス語体験なんだけど
    私はそう思うことが多い。

     
    こっちで、
    あーそうなんだ、うんうん、へー、すごいね。わあ、すてき。
    なんてことばかり言ってたら
    まあ、たいていすぐつまんねーと話を振ってもらえなくなるから>笑

     
    地元の新聞のジャーナリストさんの取材。こちらの質問は早口すぎてほぼお手上げ>笑

     
    前にブルゴーニュに滞在していた時
    何度か私を面倒みてくれたクロディーンは
    「いづみと話すのは楽しい」とよく言ってくれた。
    話すというか、フランス語だとdiscuter 議論するという意味だけど。
     
    日本の少子化問題についてとか、農産物の話とか、なんかしら投げかけられたら
    もうなんでもいいから知ってる単語つなぎあわせて前のめりに喋りたくなる。
    どうでもいいような日常の話題でも、私はこう思うんだけど、ってどんどん話していいんだとわかったら
    意見を言うのが楽しくて仕方ない。

    日常ではどこかで、こんな意見を持っているなんてやっかいだ思われないかとか
    難しい、面倒な女だと思われないかみたいなことが気になって
    かなりの部分をオブラートにつつんでいるんだと思う>笑


     
    やっかいなことを話せば話すほど面白がられるというのは、なんと楽しいんじゃろう!!



     
    先日のことだけれど、彼女のところに来ていた生徒さんが
    様々な場所で
    「何をしているの?」と聞かれて(これはものすごくよく聞かれる)
    主婦です、と答えたのだそうだ。
     
    相手の多くが「??」という反応をした。
    Femme au foyer って何?
    意味がわからないんだけど。。。。。。。

     
    そして、そこで会話は終わってしまうことが多く
    その生徒さんはしばらく、なんだか落ち込んでしまった。
    主婦って言うと、なんだかつまんないと思われるみたいなんです、と。
     
    フランスでは多くの女性が働いているから、主婦と言われても次に投げかける質問が思い浮かばない。
    なんでもいいから、前にしていた仕事を答えたらいいよ、
    今は主婦をしていますが、前は銀行で働いていましたとか
    もうなんでもいいから話せば、会話がつながるから、と話した。
     
    えー、でもそれ、もう何年も前のことだから話したらおかしいです、というので
     
    いいんだよ、だってそれがあなたなんだから、昔の仕事を話したって構わないよ。
    あとは別に仕事でなくてもいい、ボランティアとかでもいいから地域でこんな活動をしているとか
    今は家の改装に専念しているとか、とにかく自分を説明できることをなんか言えば
    それで相手はあなたを知るとっかかりができて、そこから質問ができるから、と。
    そんな風にアドバイスしてみたのだけれど。

     
    でも、なかなかコツがつかめずに
    なぜ? と聞かれて反射的に理由を言うという習慣がなくて
    なんとなくそうしたい、とか、わからないけど好きとか、そういう答えになってしまって会話がつながらず困っていた。

    家族以外の人間に、即座に自分の意見を返す。
    それ、特に日本で専業主婦を長くやっていると、後退していく技能なのかもしれないなあ、なんて思ったりもした。

     
    何に属しているか、という答えが必要とされて
    それを聞いたら安心するという文化と
     
    何をしているか、という答えが必要とされて
    それを聞いたら次の質問が思い浮かんで会話がつながっていくという文化と
     
    パーソナリティのありかは会話のあり方でも違ってくるんだなあ、なんて思うこのごろだったりする。


     
    別にフランスが良くて日本が良くないなんてことが言いたいんじゃなくて
    (だってフランス人めんどくさいし、頑固でエゴイストだし>笑 会話もしんどいことも多い)

     
    コミュニケーションのあり方ひとつでも
    お国柄があって面白いなーって思う。
     
    そんで、たまにいつも自分が埋没している形のようなものを抜け出して
    別のスタイルの中に身を置いてみると
    いろんな発見やワクワクがあって、新たな自分の側面が見えて、すごく面白いなと思う。

     
    ということで、質問文化の中で
    面白い体験をしています。

     
    さきほど作品がひとつ、売れました。

     
    たくさん質問されて、たくさん答えて、そんなやりとりの中で売れていくというのは
    なんと幸せなことなんだー、とすごく思っています。

     
    ありがたいです。
    category:アートと暮らし en France | by:武蔵野婦人comments(0) | - | -
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