「あの人ちょっと変わってるよね」はフランス語でどう表現するのか。個性、オリジナリティという言葉はどういう時に使われるのか、日本人の価値感のあり方を改めて考えた。

2016.08.14 Sunday 22:42
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    おばんです。今日は、「あの人ちょっと変わってるね」と言いたい時、フランス語ではどう表現するのか、というお話です。去年からその答えを探していたんですが、回答を手にしたとき、ちょいクラリとしました。いや、ほんとに。なんつか、足下がグラリというか。

     

    言葉の問題なんだけど、そこに「個人」をどうとらえるのかという価値感の問題が、ふかーくふかーく横たわっていると(勝手に)思ったので、今日のお題。

     

    時は昨年に遡ります。

     

    パリの友人(フランス人)に、ちょっとした愚痴をこぼしました。

    んで、その時に「仕方ないのよね、その人ちょっと変人だから」と言いたかった。

     

    さて、「あの人ちょっと変わってるから」は

    フランス語でなんと言ったらいいのでしょう。

    日本語をそのまま直訳すると

    Elle est un peu bizzard.

     

    となります。

    が、しかし、そんな表現は絶対にしないぞ、という。

    それはちょい頭がおかしくなってて、靴を頭に乗せてるとか(わからんが)、道の真ん中で大声でなんか怒鳴ってるとか、そういうことを指すよというのである。

     

    何があったのか詳しく話せ、そうしたらわかるからというので、事情を説明した。

    そしたら、

     

    ああ、それは

    Ell’a une personalité forte.

     

    でいいんじゃない? という。Personalitéは英語でいうパーソナリティ、いわゆる個性。

    Fort(e)は強いという意味。

    「彼女は強い個性がある」。

     

    敢えて「強い」とつけるの? と聞いたら、

    当たり前じゃない、個性というのはすべての人が持っていてすべて違うものだから、彼女は個性があるという表現は成立し得ない、と言われて、その時に、なんだかいろんなことが頭の中でごっちゃになったのだった。

     

     

    私は、

    「彼女は普通と違う」=「彼女は変わっている」 と言いたかった。

     

    答えは

    「全員違うのが普通である」 となった。

     

    つまり性格や人となりが「人と違う」「変わっている」ということに対する表現が、フランス語の中にはないってことなのか? と理解してみた。

    考えてみれば、当たり前のことで、「個性」はそれぞれが持つもので、十人十色ということわざだってちゃんと日本語の中にはある。

     

    それでも、日本語で「個性がある」とか「個性的」というのは、ちょっと特別なニュアンスを持つ表現で、聞くところによると今の若者が一番周囲から言われたくないのが、「君って個性的だよね」という評価なんだと。

    特に女子の場合、「個性的」と言われるのはたいがいはほめ言葉ではない。

    クラスの中に「ああ、あの子個性的だからね」という子がいたら、たいていそれはちょい浮いていることを指したりもする。

    (私がそうだったら、非常によくわかる)。

     

     

    パーソナリティ のありか。

     

    全部違うパーソナリティがデフォルト という地平にいることと

     

    全部平均値の中にいることがデフォルト、よってちょっとでも個性が強いと浮く という地平にいることと

     

     

    自分のあり方だけでなく、他者へのまなざしも違ってくるんじゃないか、などと考えた去年。

     

    そもそも、髪の色も肌の色も目の色も違う人がまわりにたくさんいて、さらに父母や祖父母を遡って行けば、出身国がもうそれぞれ違っててあっちこっちから集まって来てるよー、という場所にいるのと

     

    髪も肌も目の色もみんな同じで、じいちゃんばあちゃんから遡ってもみんな日本、って場所にいるのとでは

     

    ものの捉え方は違って当たり前なのかもしれない。

     

     

     

    まあ、それでも「強い個性がある」というのは、なるほど、ある程度は理解できる表現なので、そうか、今後は「ちょっと変わった人だ」と日本人として思う場合は、「強い個性の持ち主」と言えばいいのか、と話した。

     

    しかし、その後彼女はちょい、考え込んでしまった。

     

    「うーん、でもまだちょっと違う気がするー。なんていうんだろう、こういう時。。。。。」

     

     

     

    ってか、「あの人ちょっと変わってるから」って、日本語的にすごく悩むような言葉なんだろか。

    なんか、すごくよく使わない?

    「あー、ちょっと変わってるよねー」「ああ、あのちょっと変わったお店?」「なんか変わった夫婦だったよー」。。。。。

     

    彼女が悩んでしまったので、さらに説明を加えた。

    「なんつか、今回特別に何か変なことをしたというのじゃなくて、昔からそうなの。周りでも彼女のことを変わってるっていう人が多いの。そうねえ、なんというか、思ってもみない反応をするというか。だから嫌な想いすることもあるの。そういうの、なんて言うんだろうねえ」

     

    「あー、 それはきっと、オリジナルじゃない?」

     

    une personne originale

     

    オリジナルな人。

     

    ちなみに、オリジナルを仏和辞典で引くと、「もとの、オリジナルの」という意味のほかに、「独創的、ユニーク、斬新」というのが出て来る。

    日本語だと、「独創的」というのはポジティブな表現だけれど、それが性格に使われると、フランス語では

     

    「風変わり、奇妙」という意味になる。

     

     

     

    とても、おもしろい。

     

     

     

    いろいろうまく整理できなかったので、今回また、同じエピソードを話して、別のフランス人に「彼女変わってる」ってなんていう? って聞いてみた。

    答えは

     

    originale

     

     

     

    une personalité forte 

    だと、気が強くて、どんどん自分で決めてしまうようなタイプのことを指すから、あなたが言いたいのはたぶん、originale。

    つまり、日本語直訳でいけば、彼女ってユニーク ってことになる。

     

     

     

    なのでもし、自分がどこかで

    「いづみさんってとってもオリジナル!」って言われたら

    それは、なんか変わってるってことを意味することらしいので、覚えておくことにする>笑

     

     

     

    「あの人、変わってるね」

    という表現が存在しないフランス語。

     

    たったそれだけのことなんだけど

     

    このところの「個性を大事にした教育」と謳いながら、教室で人と違う意見を手を挙げて言うと「変わった子」になってしまって、やがてその場の空気を読む能力ばかりが鍛えられていく日本の子どもたちが、なんだか悲しいなあと思っていた私には、ちょっと心にひっかかる出来事になったのだった。

     

    いや、このところの、と書いたけど

    それは自分が子どもの頃からずっとそうで

     

    「私はもっと違うことを思いました」と手を挙げて発言したあとの、ものすごく後味の悪い空気とか

    自分が一番好きだと思った服を着て出かけると、「いづみさんはなんか変わってるね」と言われたり

    「なんかみんなと違うよね」と言われたりすることばかりが多くて

    それは重く澱のように、自分の中に「周囲から肯定されなかった」という想い出として残っているからなのかもしれない。

     

    一度、転職して入った会社で、出社時にエレベーターの中で同期の子たちと一緒になった時

    私が図書館の本をそのまま手にして乗って来たのを見て

    「そういうの、すごく変わってるよね」「うん、ももちゃんってほんとみんなと違うよね」

    「普通そういうことしないよね」と口々に言われて

    なんだかあっけにとられたことがあった。

     

    図書館の本を借りて読むってことさえ、「変わってる」って言われる世界って何。

    私がその前にいた世界では、ぜんぜん「変わってる」ことじゃなかったことが

    別の場所に来たら突然「すごく変わってる」「普通じゃない」となることの驚き。

     

    その後しばらく私は、「ものすごく変わってる子」になった。

     

     

    「変わっている」ということは、「愛されていない」「受け入れられていない」ことの裏返しのような言葉として発せられることも多かったように思い出す私は、だから、今の若者は「個性的」と言われることを嫌うのかもしれない、と思ったりもする。

    「一人一人の器」の平均値からはみでた時に、そこにはじめて「個性」が生まれると考えるのと

    「一人一人の器」が、そもそも最初から全部違うのだから、それを個性と呼ぶのだと考えるのと。

     

    言葉の問題だけでいけば、日本にいてももちろん後者の「個性」が正しいのだけれど

    実際に生きている中では、「はみでる」ことに臆病になっている自分もいて、ときどきはげしく窮屈に思う。

     

     

    なんかいろいろ思うことは多いんだけど

    うまく書けたのかどうかわかんない。

    そんでも、「個性」「パーソナリティ」という言葉について、なんだかおもろく考えてみたここ数日なのだった。

     

     

    いろいろ独創的で、ユニークで、おもろいこともいっぱい知ってて話す事が出来て

    そしてその人ならではのファッションセンスがあって、存在感がある人。

     

    それは「個性的」でも「(ネガティブな意味での)オリジナルな人」でも「強い個性がある」人でもなんでもなく

    文章として成立さえしないである

     

    彼女は個性を持っている(だってそりゃそうでしょう、みんなに個性があるんだから、個性を持つのは当たり前)

     

    そういう世界に自分はいたい。

    そして、そういう人に、私はなりたい。

     

     

     

    以上、フランスからでした。

     

     

     

     

     

     

    category:フランス留学 | by:武蔵野婦人comments(5) | - | -
    Comment
    Elle est un peu bizzard.違うんですね。読んで思いっきりそう回答してしまいました!今回のエッセイも、テーマをとても興味深く楽しく拝見しました。ちょっと違ってしまうかもしれませんが、私は「大人はちゃんとしていると思っていたけれど、自分が大人になってみると、大人は皆変わっているということがわかった。」とずっと思っていました。この「変わっている」ということが、自分の中で上手く表現できていなかったのですが、このエッセイを読んでわかりました。「originale」ではなく「personalité」だったのですね。日本では「変わっている」に近い表現で「天然だから」というのもありますね。私もたまに言われますが。
    • Ayako Kondo
    • 2016/08/17 11:10 PM
    Ayakoさん、お返事がこんなに遅くなってしまっていただー! すみません〜。「天然」ってのもいい表現ですよね@日本語。それ、フランス語だとなんていうのかなあ。言葉ってお国柄と文化、価値感で微妙に違って、おもしろいですねー!
    • 武蔵野婦人
    • 2016/11/06 1:38 PM
    初めまして!
    こちらのブログを紹介されていたブログから参りました! こちらの記事、とても理解が深まりました。
    日本の横並びの違和感、自分がなくなる(没個性)文化というか習慣というか、そういったものへのずうっと感じている違和感がするっと解きほぐされた感じがします。ありがとうございます。
    過去の記事も順に読ませていただこうと思っています!
    (私もブログをしており、そこでこの記事をご紹介させていただけたら嬉しいのですが…。失礼でありましたら申し訳ございません。)
    piyosukeさん、コメントありがとうございます。
    前に書いた記事なのですが、紹介していただいているのですね。わー、知らないところで読まれていると感じるとちょっと恥ずかしいです(って、それがブログというものなのでしょうが>笑)
    ブログでの紹介、もちろん、構いません。またpiyosukeさんのブログも読ませていただきたいと思います。ありがとうございます、これからもよろしくお願いいたします。
    • 武蔵野夫人
    • 2017/08/11 9:31 AM
    こんばんは!
    ブログ紹介をご快諾くださってありがとうございます。ようやく書きました。

    記事を今も続けてさかのぼって読ませていただいています。歴史を知っていけるようでワクワクしています。ありがとうございます。

    取り急ぎお礼申し上げます!(ご返信はお気遣いなさらないよう…)ありがとうございました😊








       

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    • 「それはよい趣味ですね」と言われたけど、趣味って何? フランス語には「趣味」って単語ないみたいだよ。
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