アートは日常の内側にあるものなのか、外側にあるものなのか。世界一美術館に行くのは日本人、というデータからパリで考えてみた。

2016.07.25 Monday 17:54
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    パリ、月曜日になりました。何して過ごしていたんだか。

    ほでも一日にひとつ、美術館に行くってことはやっている。金曜日にマレのギャラリーとブランクーシのアトリエ。土曜日にmaison rouge、日曜日にはパリ市立近代美術館に行った。

     

    金曜日は入場はすべて無料。maison rougeは10ユーロ。市立近代美術館は無料。

    ただし、近代美術館で開催されている企画展には入場料がかかる。今回やっていたのはPaula Modersohn-Becker、Albert Marquet。前者は31歳で出産を機に亡くなってしまったドイツの女流画家で、ダダイズムなどの近代美術の萌芽を感じる重要な画風、後者はモネなどの印象派を彷彿とさせるにもかかわらず、どちらかといえばイギリスのターナーと関係付けられるかなり独特な作風。

    私は二人とも、名前さえ聞いたことはなかった。でも、2つあわせて15ユーロの入場料を払っただけの意味があった。すんげーよかった。ありがとう。

     

    ほで、こんな展覧会が非常に賑わっていた。

    日曜日、ということもあったけれど。

     

    当然、こげなものに観光客はあまり来ないので、だいたいが地元の人で、1人で来ている人も多かった。

    ちなみに市立美術館の常設展は常に無料で、誰でもタダで入れる。

    セーヌの対岸にはエッフェル塔も見えるし、IENAの駅で降りて、向かい側にあるガレリアの庭園でごろごろして、美術館でトイレ寄って、ついでに絵を見てく、なんてのはお金を使わない素敵な午後の過ごし方だと私は思う。

    IENAには水曜と土曜日にマルシェが立つので(んで、これがすごくいいマルシェなので)、そこでサンドイッチでも買ってごろごろしていれば、一日遊べる。

     

     

    タダでも、この美術館のすごいところは、その収蔵品の多さ、クオリティの高さ。

    壁面いっぱいのマチスのダンスも、巨大なデュフィの「電気の精」の部屋も、お金払わず見せていただいていいんですか? と恐縮したくなる気前の良さだ。名だたる巨匠の作品も、コンテンポラリーもいっぱいあるし、たまに展示も変わるから、何度きても楽しい。

    キリコのコレクションなんて、汐留のパナソニックギャラリーに入場料払って見たものより、充実してる>笑

     

    そして、常によい企画展をしている。

    去年はヘンリー・ダガーが見れた。すごくクオリティが高かった。

     

    土曜日のmaison rougeでは、EUGEN GABRITSCHEVSKY(なんて読むのかぜんぜんわからん)っていうロシアの作家のタブローと、NICOLAS DARROT(フランス)のインスタレーションが企画されていて、これがもう、面白くて面白くて、かなり長い時間をだらだらと美術館の中で過ごした。

     

    それで思うんだけど、生活圏でただうろうろしているだけで、知らなかった作家、思いがけなく素敵な作品にどんどん出会える場所なんだなあ、パリって。なんか、ちゃんと提示してくれるっていうか。

    昨年も、これまで知らなかった作家の存在をたくさん知った。それが、ごく普通に、美術館だけでなく、公園や駅や、あらゆる場所で目に付くところに存在しているなあって思う。そして、それをゆっくり観賞できる。おしゃべりしながら。

    同時に、たいがいの家には誰かの作品の額が飾ってあって、「絵を手に入れる」ということに対しても、すごく自然な国だと思う。日常に、アートが内包されている。

     

     

    ここまでは、昨日までの備忘録。作家の名前忘れないように。

     

     

    さて、ここで本題なのですが(遅い)、

    日本って、美術館の来場者が世界一多いって知ってました?

     

     

    知らんかったよ、私は。

     

     

    ま、今年の若冲展の狂喜乱舞ぶりを見たら、さもありなん、とも思う。

    若冲なんて、5月10日に20万人来たそうだ。5時間並んで満員電車状態でなぜ行く?という質問は愚問かもしれないのでやめとくけど。

     

    ほか、歴代の入場者数は、NYやパリの数字を上回るそうで、近年では阿修羅展とかオルセー、マルモッタン、ルーブルあたりが上位に入ってる。最近は日本のいいもん的な方向が流行っているので、薬師寺や長谷川等伯なんかも記録を残してる。いずれも、大行列になr並んで見る、という状態は同じ。

     

     

    うーん、でもさ、と思う。

     

    みんな、そんなにアート好きだっけ?

    私の周りには、「あー、ピカソぐらいなら聞いたことがあるけど、あと知らない」とか、「ミロっていう人知ってる? え、知ってるんだ。さすが、すごいね!」なんてことを言う人もいて、なんか取り立てて絵が好きっていう人がいっぱいいるようには思えない。

    そして、作家にとっては受難の地で、絶望的に絵は売れない。私のやってる版画なんて、特にもう、だめぽ>笑

    それでも、美術館の入場者は世界一。

     

    わけわかんね、と思っていたら、

    学芸員の友人が面白いことを言った。

     

    「展覧会というのは、日本人にとっての”見せ物”文化に近いところがあると思う。

     珍しいものが好きで、見せ物に集まってしまうというのは、江戸時代からあったこと」

     

    うん、つまりはなんか物珍しいものがやってきて、そこに人が集まっているから、出かけてみている、ということ。

    行列はむしろ、「見る価値があるもの」のサインだから歓迎すべきもの、ってことになるのかな。

    もちろん、純粋に見たくて来るひともいっぱいいるけれど、どこかのゾーンに達した時点で、「見せ物」としての立ち位置が確立すると、あとは黙っていてもそこに人が集まってくる、ということなんだろう。

     

     

    もちろん、パリでもNYでも、企画展に人が並ぶことはある。

    ほいでも、大きな違いはそうした並ぶ企画展以外にも、常設展や小さい企画展がきちんと成立していることで、私の今回のパリのように、特別アグレッシブに動かなくても、ちょっとしたいいもんに巡り会えることが多いってこと。

    日本だと、かなりアグレッシブに探して歩かないと、なかなか新しいものには出会えない。

    最近は小さくてよい展覧会が増えたなあって思うけど、それでも普通に暮らしていたら、目に入るのはよく見知った「ブランド」展覧会がほとんどで、それがあるゾーンに達すると、異常に人が殺到するという現象が続いている気がする。

     

     

    それ、どうして??

     

     

    って思ってるんだけど

    それはどうやら、日本の展覧会がメディアの後援を受けて成立しているところにも理由の一端があるようだ。

     

    大きな展覧会には、新聞社やテレビ局、広告代理店などの後援がつく。

    それ、海外では存在しない、戦後から続く日本独特のシステムなんだそうだ。

    読売新聞契約すると、野球のチケットだけじゃなくて美術展のチケットもらえたりね。

    あとグッズの売り上げも後援側に入る仕組みもあるそうで、結果的に集客が収益そのものに結びつく仕組みになっているんだと。

     

    そういう仕組みがあるから、メディアは自分の得意分野でがんがん特集記事や番組を作る。

     

    それを見て、人が殺到する。

     

     

     

    結局、ある種の展覧会の軸が、メディアという経済軸と大きく関わっている、ってことなんじゃないかと思う。

     

    日本ではアートが生活の内側に含まれているというよりも

    暮らしの外側で、イベント=見せ物 として現れることが多くて

    だから、絵を買うとか、新しい作家を応援してみるというようなことよりも

    テレビや新聞がいいよ! って言ってて、どうやら人もいっぱい集まっているらしいという場所にでかけていき

    ああ、これがあの、みんながいいよって言ってたものだ、、、と確認する

     

    というスタイルになりがちなのかもしれない。

    個人の価値感より、集団としてのメディアの価値感が主体となって

    ケである暮らしの外側に、ハレとして存在するもの。

    そういう存在そとしての展覧会が、イコール、アート。ってこと???

    わからんけど。

     

    展覧会の入場者が世界一って、誇れる事だと思うけど

    うーん。どうなのかな。

    美術、アートって、個人個人の価値感を最大限に自由にしてくれる分野で

    だから、ちゃんと、自分の内側にアートの軸を置いておかなくちゃいけないんじゃないかなー、なんて

    せちがない最近の日本では、よく思ってる。

    こちらの美術館で、絵を前にしていろいろ批評し合ってるような姿を見ると、なんか純粋に、うらやましい。

    どんなにメディアや権威が「よいものだ」と言っていたとしても、それを「嫌いだ」という権利は、私たち一人一人の中にある。

     

    同時に、ぜんぜん知られておらず、評価されていないものを、「大好きだ」と特別な場所に置く自由も、私たちの中にある。

     

    ちなみに、いまギメ美術館では、アラーキーの展覧会やってるよ。

     

     

    ものすごくいい展覧会。

    美術館の4階には、田辺小竹さんの竹のインスタレーションも今、展示されてる。もうすぐ会期終わりかな。

     

    日本人として、すごく誇りに思う。

     

     

     

    今日は月曜日だから、美術館はお休み。

    唯一空いてるポンピドーでは、クレーの展覧会やってるようです。

    さて、どうしようかなー。

    クレー、大好きだけど。

     

    のんびりごはん食べながら考えます。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    category:Paris ひとり暮らし | by:武蔵野婦人comments(2) | - | -
    Comment
    Izumiさん、こんばんは。私も、今は亡き有名画家の展覧会で複製であるポストカードやポスターを購入して部屋に飾ったりはするけれど、同時代の作家の絵画(本物というか実物というか。)を購入して飾ることは少ないです。そういうことかしら。例え世の中に評価されていないとしても、本物は力があります。あり過ぎる時もあります。
    • Ayako
    • 2016/07/25 9:42 PM
    Ayakoさん、コメントありがとうございます。
    私も展覧会で買ったポストカードやポスター、部屋にいっぱいあります! でも、本物の絵はほんの一部です。理由は、やはり飾る壁が決定的に少ないこと、季節ごとに掛け替えるにしても、収納場所がないこと。もう少しいろいろ余裕があったら、絵を買いたいなあってよく思います。ほんと、本物には力がありますよね。ありすぎることもある、というのもよくわかります。
    • 武蔵野婦人
    • 2016/07/27 4:40 AM








       

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