「それはよい趣味ですね」と言われたけど、趣味って何? フランス語には「趣味」って単語ないみたいだよ。

2016.04.11 Monday 11:25
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    先日友人と話していた時、
    「銅版画されているのね、それはとてもよい趣味ですね」と言われた。

    んだけど、あれ? 私、銅版画趣味でしてたんだ?? と一瞬ポカンとしてしまった。
    趣味でしている気は毛頭なかった。
    でも、先日書いた「肩書き」のブログの内容のようなことで言うと
    それで生活費を稼いでいるわけではないので、「仕事」ではないんだ。

    仕事じゃないけど、趣味でもない。
    あれれれ?

    …と思ったところで
    そうか

    趣味 と
    仕事

    という言葉の解釈がどこにあるか、ってところの問題なんだ、と思った。


    ご趣味はなんですか?

    という会話は、日本語ではとてもよく交わされていて

    「観劇です」とか
    「東海道五十三次を回ることなんですよー」とか
    「水彩画に凝っていまして。。。。」
    なんてあたりから、最近では

    「リアルスイーツのアクセサリーを作って、creemaで販売しています」だの
    「スワロフスキーのデコで携帯カバーを作っていて、それでプチ稼ぎしています」
    なんてことにもなっている気がする。

    (ちなみに、主婦の「プチ稼ぎ」というのが、月額いくらぐらいを指すのか、という質問を
     某有名主婦雑誌の編集長に聞いたところ、”1万円” という答えが返ってきて衝撃だった)

    辞書では
    「仕事、職業としてではなく、個人として楽しむこと」が、趣味の意味。

    「仕事、職業」というのがあくまでも主体であって
    それ以外の時間に余暇で楽しむことが、趣味。

    仕事と職業は社会に属すことで、趣味は個人に属すこと。

    サラリーマンが休日にどんなによい写真を撮っても、それは趣味。
    主婦の仕事は家事だから、それ以外の時間にプチ稼ぎをしたとしても、それは趣味。
    そういうことなんかなー。



    私は、普通は趣味と言われるようなものがとても多くて、あれこれ手を出しすぎるなって言われることもあるけど
    でも
    それは根っこで全部つながっている。

    ワイヤーをぐにゃぐにゃするのも、布を染めてぐにゃぐにゃするのも
    銅版を引っ掻いて腐食させて版画を作っているのも
    何かを表現したくてたまらない自分の中にあるものの、手段を探している。

    空いた時間に、趣味として楽しんでいますよー、っていうより

    なんつか、もっと
    ひりひりとしたものだ。


    それで、ふと思い出したのは

    フランス語の辞書で「趣味」と引いたとき

    該当する言葉がどうやってもみつからない、ってこと。


    敢えていえば「Hobby」。
    それ、英語だ。
    つまり、フランスには同様の単語がないので、英語で使われているってこと。

    フランス語はHを発音しないので、オビー となる。
    ほでも、あなたのオビーは何ですか? なんて質問
    フランス人からされたことないなあって思う。

    普通に辞書に並ぶのは
    Gout
    Passe-temps

    つまり、「○○が好きとはよい趣味の方だ」として使われる、「感性」と同義語の趣味。
    もういっこは、暇つぶし。
    例文で多くあるのは、こちらなので、直訳すると
    「暇なときには何やってんのー?」
    「うーん、読書したりトランプしたりとかかなー」なんてことになる。

    ここで「油絵をもう10年ほど描いている」なんてことになると
    それは暇つぶしではなく、もっと主体的、能動的なことになってうまく噛み合ない。

    逆に日本だと
    「趣味は油絵で、もう10年ほど描いています」という人でも
    受け取る側が想像するのは、カルチャースクールに通ってるのかな? 的な解釈になりがちで
    なんというか、「趣味」ってすごくよく使われる言葉だけれど
    価値としては、社会的な地位や職業みたいなものと大きく区別されているものの気がする。
    だから
    「ああ、それはいい趣味をお持ちですね」って言われて
    私は一瞬、うまく理解できなかったんじゃないかと思う。
    それ、仕事と同じぐらい、っていうかもっと、大事で価値があると思っていたから。

    ここからはものすごく自分勝手な解釈になるけれど

    フランスのように非常に個人主義的な価値観や発想から考えていけば
    重要なのは、その人が何をしているかなのであって

    それで「お金を得ている=仕事、職業になっている」のかどうかとか
    「社会の側にあるのか、個人の楽しみなのか」どうかなんて
    全く関係ない、ってことじゃないのか。

    「絵を描いています」という人に対して
    それが対価を生んでいるのかってあたりを分ける意味はないし
    会社員をしながら描いてるんだから、それは趣味、と判断する意味もまったくないってことになる。
    「描く」ことに価値があるのだから。





    そういえば、「あなたの職業は何ですか?」と尋ねるときも、フランス語では
    「あなたはあなたの人生で何をしているの?」という構文になることが多い。
    「仕事」「職業」という言葉が登場しない形で。

    そこでの答えは、○○会社で営業をしていると答えてもいいわけだし
    その傍らでボランティアをしていると答えてもいいわけで
    大事なのは、「その人」が何を基軸にしているかってことなんだと思う。



    私はもう20年近くフリーランスで、ほんとのほんとに1人っきりで仕事してきて
    その前に10年フルタイムの会社員だったので、最初は一日の時間の使い方に慣れなくて困った。

    昼の時間に仕事をせずに、デパートに買い物に行ったり、昼寝することにも罪悪感を感じて
    みんなが仕事をしている時間は、「稼ぐ」ことにつながる活動をせねばあかん! と
    律儀に頑張った。

    ほいでも、フリーで仕事しながら、仲間とチャリティ活動をしたり、同じフリーの子たちと
    食事したり展覧会でかけたりを繰り返しているうちに、だんだん
    何がお金を生む「仕事」で、何がそうでないのか、って境界線があやふやになり
    公とプライベートの区別があまりなくなってしまった。

    いまは、1週間のうち、外出が多い、忙しい、忙しいと思って過ごしていても
    そのうち、ギャランティが発生する「仕事」が一個もなかった! なんて週もある。
    いや、搾取されてただ働きしてるって意味じゃなく
    友達と飲むのも、展覧会に行くのも、知り合いの手伝いに行くのも
    ぜんぶ私の用事であって、同等に大切で意味があるものだから
    区別がなくなってしまっただけ。


    そんな風に暮らしていたら
    銅版画をすることも、絵を描くことも
    ほかのすべてと同様に、人生で自分を表現していくための真剣な手段だって気がする。

    このところ、久しぶりに会う人から続けて
    「いづみちゃんは今、仕事は何が中心なの?」って聞かれて
    「何やってんだろうー、あれ?」ってとっさに出てこなかったけど>笑
    何が「仕事」で、何がそうでないのかが、もうあんまりよくわかんなくなっちゃったんだと思う。

    もちろん、生きて行くために稼がなくてはならない(なんといっても、私はシングルだし
    何かあったら私を養ってくれる人なんておらんわけで、このあたりはかなりシリアスに崖っぷちだ)
    わけなので、ちゃんと仕事もしなくちゃならない。
    生きていくのは優しくはない。


    以前、フランス人の友人と話していて
    子どもを育てていれば、国からある程度の給付金がもらえるし
    アーティストでいるということでも、給付金がもらえて
    「稼がなければ価値がない」というぎりぎりのところで生きなくてよいというのは
    心の持ち方に大きく影響する、って言われた。

    フランスが日本よりいいと言いたいわけじゃなくて
    いろんな問題点はいっぱーい抱えているんだけど


    フランス語に「趣味」って言葉が存在しないよね


    というたった一つの事柄だけから
    「人生で稼ぐことの価値」
    という価値感の違いが、ちょっと透けて見えるような気がしたです。



    ってことで、銅版画は私にとっては趣味じゃないんです。
    でも
    かといって、仕事でもない。
    売って儲けようとか、賞を取ってやろうとか、そんな方向性で考えたことがない。

    でも、
    なんだかそれをせずにはいられないこと。

    自分が自分であるために、模索し続ける中でやり続けること。


    そういうものを日本語では何というんでしょ。


    フランス語のように

    「あなたは、あなたの人生で何をしていますか?」



    それで、いいような気がするんだけどね。






     
    category:Dairy Tokyo | by:武蔵野婦人comments(7) | - | -
    Comment
    わたしは自分のことを
    「生涯一絵師」であると思っています。

    上絵で稼ぐとか、コンペに出そうとか、一度も考えた事ありませんが、買ってくれるという方がいれば売るし、かと言ってたくさん作ってという事も考えてないし。

    でも、自分にしか描けない絵があるという事だけはしっかり見えているつもりです。
    そのための勉強は実技も理論もずっとしてきたし、作品に対する技術も目も磨いてきました。

    日本にいると、そういう型を気にする方は多いですが、自分をしっかり見つめてると、迷いもなくなってきます。

    ほかで何をして稼いでいても、わたしは作家であると思っています。
    ブログ拝見させていただきました。
    面白かったです。
    これからもよろしくお願いします。
    • shintaro
    • 2016/04/26 9:33 PM
    初めまして。
    今日初めてブログを見させて頂いたのですが、
    興味深くて見入ってしまいました。
    確かに、趣味じゃない!!と、とっても共感してしまいました。何かを作ることを人生の軸にしているので、絵を描いたり者を造ったりすることは人生のメインテーマであって、趣味じゃないよな〜と。
    上手く言葉にできないのですが、とっても良い機会を頂き、ありがとうございました!
    • なみぬん
    • 2016/04/26 9:39 PM
    >酒井さん なんか、このブログはコメントに気づくことが難しい仕組みになっていて、ほんとにすみません。もうだいぶ前に頂いていたコメントが埋もれていました。今更ですが。。。。。ごめんなさい。
    おっしゃることがしみじみと心に入ってきます。そうですね。自分をしっかりみつけていれば、迷いはなくなってくる。その通りだと思いました。私もしっかり自分をみつけてみたいと思います! ありがとうございます。
    • 武蔵野婦人
    • 2016/08/04 3:14 AM
    >Shintaroさん、コメントありがとうございました。遅くなってしまったのですが、感謝とともに、これからもどうぞよろしくお願いいたします!
    • 武蔵野婦人
    • 2016/08/04 3:15 AM
    >なみぬんさん こんなに時間がたってしまってからのコメントでごめんなさい。人生のメインテーマ。その通りかもしれませんね! 自分のメインテーマをちゃんと見据えていけば、さほど迷いは生じないのかもしれません。こちらこそ、どうもありがとうございました!!
    • 武蔵野婦人
    • 2016/08/04 3:16 AM
    私は会社でしてることが趣味もしくは遊びでありたいと思ってます。ほっとくとつい『仕事』みたいになりがちですが、大事な仕事、という意味では会社より優先することはいくらでもありますから。
    さらに言えば、会社の仕事が遊びなら、苦楽しいもできますし、骨惜しみしなくなりますし。
    • ウチヤマ
    • 2017/04/20 10:17 AM








       

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